式 辞

 

 東北生活文化大学ならびに東北生活文化大学短期大学部を代表いたしまして、卒業生の皆さんに御卒業のお祝いを申し上げます。とともに、一日千秋の思いで今日を待ち望んでおられた保護者の方々に対しても、衷心よりお祝い申し上げます。

 昨今のコロナ禍において、規模縮小・時間短縮による卒業式となり、大変残念ではありますが、来賓・保護者・在学生には御遠慮いただく形となりました。しかし、本日このように挙行できますことは、教職員にとりましても、大きな喜びでございます。

 

 栄えある今日を迎えた卒業生は、

東北生活文化大学 家政学部家政学科服飾文化専攻9名、同健康栄養学専攻32名、生活美術学科17名、の計58名、そして

東北生活文化大学短期大学部 生活文化学科食物栄養学専攻25名、同子ども生活専攻 45名、の計70名、大学・短期大学部、合計128名であります。

 

 三島学園東北生活文化大学ならびに短期大学部の歴史を紐解くと、明治33(1900)年、東京で法学を学んだ三島駒治が、「東北法律学校」を設立、続いて三島駒治・よし夫妻によって創設された「東北女子職業学校」にまで遡(さかのぼ)ります。昨年、令和2年10月27日に創立120周年を迎えており、東北の中心地仙台に根付いた、伝統ある教育機関としてこれまで親しまれてきました。

 「令和」という新しい元号を迎え、そのいわれは、『万葉集』巻五の「梅花の歌 三十二首」の序文「時(とき)に、初春(しょしゅん)の令月(れいげつ)にして、気淑(きよ)く風和(かぜや)はらぎ」であるといわれています。三島学園には、三島よし校長の親族である齋藤實(まこと)子爵(第30代内閣総理大臣)御手植えの紅梅白梅が毎春咲いています。旧正門の近くで、現在、白梅がほぼ満開になっています。気淑く風和はらぐなか、清く、正しく、健やかに、時代とともに年輪を重ね、咲いてきた梅花であります。このように、三島学園も年輪を重ね、今後も歩んでいきたいと思っています。

 

 「東北女子職業学校」を母体に、衣食住という「生活と文化」を基軸に据え、現実の社会生活に貢献しうる「実学」を重視する教育機関として、明治、大正、昭和と、東北における日本社会の近代化を担ってきました。昭和26年(1951)三島学園女子短期大学、昭和33年(1958)三島学園女子大学が設置され、学園創立以来の女子教育の伝統を受け継いでおります。と同時に、生活することの原理、原初に立ち返り、実験、実習を重ね実証していくという教育と研究の姿勢を貫いております。いわば、「学問のすゝめ」の福沢諭吉が語る「サイエンスとしての実学」を大事にしていると言えないでしょうか。さらに、文化を生みだす力、すなわち創造力によって生み出される美術・工芸から、地域連携事業においても、本学ならではの独創性(オリジナリティ)が発揮されています。

 

 昨年から現在まで、新型コロナウイルスが蔓延し、マイナスの意味で、地球社会のグローバル化の大波に呑み込まれてしまいました。対面授業が一時期できなくなり、遠隔授業をやらざるをえない状況もありました。卒業式に列席している皆さんも、夏休みもほとんどない過酷なカリキュラム編成であり、大変な思いをしたにちがいありません。

 それにもかかわらず、12月5日、家政学科「令和2年度課題研究発表会」、年明けてからの2月1日、生活文化学科子ども生活専攻「令和2年度施設・保育所・幼稚園実習報告会」、生活文化学科食物栄養学専攻「校外実習(給食管理実習)報告会」が開催されました。いずれも真摯に立ち向かい、プレゼンテーション・スキルも向上し、皆さん一人ひとりが画像・文章を編集し、真っ直ぐな姿勢で発表していました。

 さらに、2月8日、「教育実習報告会」が開かれ、「家庭」「栄養教諭」「美術・工芸」それぞれの免許を取得しようと、合計19名が発表を頑張っていました。その日は、学内の3教室をオンラインで結び、双方向性(インタラクティブ)の環境ができあがっていました。

 

 一方、日本社会では、出生数が減少し少子化問題が生じております。当然、女子であっても、男子であっても、働かなければならず、結婚後も働かなければならない社会環境になってきています。家庭を持ちながら、「働く」、そして「子育て」をと、両輪(ハイブリッド)で生活する姿が当たり前になってきています。ここに「保育士」「幼稚園教諭」「栄養士」「管理栄養士」が社会の一員となって、個人の生活をサポートするという体制が、今後より必要となってくるでしょう。

 

 今後さらに、地球社会のグローバル化が押し寄せ、高度情報化社会に対応する人材養成が急務とされています。そして、サイバー空間(仮想空間)とフィジカル空間(現実空間)を高度に融合させたシステムを構築し、人間中心の社会(Society)を作り出そうという、ソサエティ5.0(Society5.0)が進行しています。そのためには、コミュニケーションスキル、数量的スキル、情報リテラシーなど実生活に必要なAI技術、それと、人文・社会科学、文化・芸術などの幅広い教養の涵養が求められています。

 このような「21世紀型市民」の人材養成を担う大学機関として、本学はその役割を演じようと、スタートラインに並んでいます。大学祭やファッションショーでの皆さんの一生懸命取り組む姿を見ても、私はそのように感じ取っています。

 

 「梅花の歌 三十二首」では、大伴旅人の居館(やかた)に集まった人々が互いに歌を詠い合い、楽しいひとときを過ごしているのです。卒業生の皆さんも、春に梅花、桜花咲きほこる、この虹の丘の東北生活文化大学・東北生活文化大学短期大学部で過ごした日々を胸に抱き、集い、懐かしんでいただきたいと思っています。学生時代の友情は一生続くものです。そのためには、本学の校訓「励(はげ)み、謹(つつし)み、慈(いつくし)み」が必要かもしれません。

 

 本学の校訓「励み、謹み、慈み」を胸に刻み、心の奥深くに宿る本来の「自分自身」の姿を、働くなかでふとみずからが自覚できますと、個人としての主体性が発揮でき、人生百年時代の楽しみや自由を享受できるのではないでしょうか。このような日本的ともいえる本来の真の「自分自身」の探求を一人ひとりが実践していくのです。そうすれば、その地域、すなわち東北の生活と文化に、多様性に満ちたエネルギーが生み出されてくるのではないでしょうか。

 21世紀は、「地球社会」の理想的な形を実現すべく、卒業生の皆さんをはじめ、若人の活躍する世紀であると確信しております。東日本大震災から10年が経過した上で、皆さんができることがきっとあるのです。

 

 教職員一同、卒業生の皆さんの御卒業を心からお祝いし、本来の「自己自身」の探求に励み、グローバル化した「地球社会」の一員として成長なさることを祈念し、式辞といたします。

 

令和3年3月15日

 

東北生活文化大学・東北生活文化大学短期大学部

学長 佐藤一郎

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