仙台の桜の開花予想は、ちょうど今頃でしたが、ここ数日の寒さで足踏みしているようです。そんな中、昨日3日(水)、平成31年度入学式が挙行されました。

今年度から佐藤一郎新学長が就任し、大学・短大新入生ならびに大学編入学生を迎えました。新入生の皆さん、おめでとうございます。

 

佐藤一郎学長式辞

まもなく「平成」から「令和」という年号を迎えます。「令和」とは、万葉集にある梅の花がほころび開花する歌に由来しているそうです。90年以上前に、斎藤実子爵が三島学園に植樹されたという、紅白の梅の花も皆さんを迎えております。
本日、東北生活文化大学は、83名の入学生を、また東北生活文化大学短期大学部は81名の入学生を迎えました。そして、短期大学部卒業生2名を大学3年次への編入生として迎えました。総計166名の皆さん、入学誠におめでとうございます。同時に、これまでの皆さんのご努力に敬意を表しますとともに、皆さんを支えてこられましたご家族や関係者の皆さまにお祝い申し上げます。

 

三島学園は、現在東北生活文化大学、東北生活文化大学短期大学部、東北生活文化大学高等学校、短期大学部附属ますみ幼稚園、短期大学部附属ますみ保育園の5つの教育機関ならびに保育機関を擁する総合学園であります。1900年、明治33年、三島駒治氏による東北法律学校を創立した時に始まります。3年後に、日本の近代化を図るうえで、女子教育の重要性を認識し、この東北の地、仙台に、三島よし夫人による東北女子職業学校が開校されました。今年で、創立119周年を誇る伝統ある学園であります。

 

東北生活文化大学は、1958年、昭和33年に、三島学園女子大学が創設され、1987年、昭和62年には、男女共学制を取り入れ、東北生活文化大学へと改称し、現在に至っております。大学創設61周年を迎えております。
また、短期大学部は、東北女子職業学校を、1944年、昭和19年に東北女子実業学校と改称し、1947年、昭和22年、三島学園女子専門学校に、さらに1951年、昭和26年に、三島学園女子短期大学に昇格した時に始まります。2004年、平成16年に、男女共学制を取り入れ、東北生活文化大学短期大学部と改称し、現在に至っております。短期大学部は、創設68周年を迎えております。

 

三島学園が発足した1900年といえば、パリ万国博覧会が開催された年であります。日本の生活と文化が、美術品と工芸品とともに、大々的に紹介され、好評を博しました。その結果、ヨーロッパにおいて、日本趣味と言われるジャポニズムが広まり、それに触発されたアールヌボー、ユーゲントスティール、アートアンドクラフトなどの生活文化に根ざした芸術運動、さらには印象派の画家たちにも多大な影響を与えました。三島学園の開学当時の写真や、戦後の染色、編物、織物などのテキスタイル作品を鑑賞すると、このような当時のヨーロッパにおける、生活に結びついた文化と芸術に親近感をもち、かつ和服などの伝統文化などにも着目がなされているように思えます。異文化との出会い、あるいはやりとりによって、東北という地に新たな生活文化生み出そうとしてきたと言えるのではないでしょうか。

 

東北生活文化大学家政学部では、これまで培ってきた家政学教育の伝統を生かし、現代に生きる新しい生活文化を生み出そうとしております。そのために、人文科学、自然科学の基づく理論面のバックアップ体制と、現代社会の多様化、複層化に対応しようと、カリキュラム編成に努力しております。
「服飾文化専攻」では、現代のアパレル・ファッション業界を視野に入れた、高度な知識と技能を生かした服飾文化の専門家、例えば衣料管理士の養成を目指しております。
「健康栄養学専攻」では、医療と福祉を視野に入れた健康・栄養・食事の専門家、例えば管理栄養士などの養成を目指しております

 

さらに、本年度から「家政学部 生活美術学科」は改組され、「美術学部 美術表現学科」が新たに発足しました。仙台には、東北地方の中心都市であるにもかかわらず、これまで美術分野全般にわたって専門的に教育研究にたずさわる大学、学部がなかったのです。仙台市は、文化・芸術などの創造活動を活性化するために、「クリエイティブ産業」の振興、誘致に努めており、地域創生に貢献できる人材の育成を望んでおります。「美術学部 美術表現学科」は、「幅広い教養と、美術の高度な専門的知識と技能を身につけ、実学として地域創生に貢献できる人間性豊かな人材を養成する」ことを目指しております。
また、家政学部、美術学部とも、小学校、中学校、高等学校の教員養成に力を入れております。

 

短期大学部生活文化学科「食物栄養学専攻」では、食生活を科学的に把握し、幼児から高齢者の健康と安全に配慮する栄養士の養成を目指しております。「子ども生活専攻」では、現代の保育環境の仕組みと実態を把握し、子どもの食育と栄養、保健と発達臨床心理学を学び、「造形」「音楽」「体育」のスキルを学び、保育士、幼稚園教諭の養成を目指しております。

 

いずれの専攻においても、皆さん一人ひとりの人間としての「感覚する力を鍛えること」がまず重要だと思われます。例えば、視覚において、物を見ているだけでは、物を見る見方は鍛えられません。手でそのものを触ることもいいでしょう。そのものを運んだり、叩いて音を聞くことも、味わったり、匂いを嗅いでみるのもいいでしょう。五感で感じ、全身で感じることです。
例えば、一枚の紙に鉛筆で、そのようにして見たものを描こうとしてみてください。なかなか思うようには線が引けません。何回も繰り返し線を引いたり、消したりしているうちに、つまり「見ること」と「描くこと」の往復運動を繰り返しているうちに、自然と「美しい形」が紙に現れてくるのです。それは物を見ている現実の姿が線によってひとりでに現れるのですから、喜びが心の中に溢れてきます。その結果、個人みずからの創造する力を自己発見できるのです。このような感覚する力と創造する力の絆が重要になってきます。
三島学園は、創立当初から「感覚する力と創造する力の絆」による「美しきもの」を求め、日常生活に生かす様々な手立てを追求する教育と研究を行ってきました。その延長上に、「東北生活文化大学」はあり、現代社会における「感覚する力と創造する力の絆」による「生活と文化」を担う人材を育成することに努めています。繰り返しになりますが、東北という地の地域創生を目指し、アクティブラーニングを通して、「地域の未来を共に創ろう」としています。
このように、世界に類例を見ない「東北生活文化大学」の存在そのものがユニークであり、現代社会に直結した教育と研究を行う場であります。このような場で、皆さんはこれからどのように成長していくのか、われわれ教職員一同は大切に見守っていきたいと思っています。

 

三島学園の建学の精神は、「高い知識と技倆を修め、常に文化創造に寄与する、清く、正しく、健全な人間の育成」であり、校訓は、「励み、謹み、慈しみ」であります。このような建学の精神と校訓を、皆さんみずからの心の中で反芻してみてください。そして、今後四年間、あるいは二年間持続してこつこつと、各専攻に応じた、そして学生一人ひとりに課せられた「感覚する力と創造する力の絆」を鍛えてください。そうすることによって、社会に対して自信を持って立ち向かうことができ、社会と皆さんとの絆がしっかりと結ばれ、社会に貢献しうる幸せな生活が開けてくるのではないかと、皆さんに期待しております。

 

私も新入生であります。現在の宮城県大崎市古川に生まれ、その後仙台で、幼稚園、小学校、中学校、高校と過ごしました。宮城県、それも仙台市という地域で育てられた人間です。ふるさとに54年ぶりに戻り、何か恩返しをしなければならないという気持ちです。すべてに対して慈しみをもってことにあたり、頭を垂れ謹み深く人の話を聞き、与えていただいた職責に励まなければならないと、私自身に言い聞かせております。

 

以上をもちまして、入学生の皆さんへの式辞といたします。

 

平成31年4月3日

 

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生文大通信

先輩が入学を決めた理由

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